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慢性炎症性脱髄性多発神経炎の話(5)

これまで何度か書いたまま、そのまま放置になっていたCIDPの件です。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の話
第1回 CIDPってなに?
第2回 CIDP罹患~私の場合
第3回 CIDPの発症から経過
第4回 CIDP経過の続き 

これらを書いた時点で、ある程度は想像・覚悟していたのですが、それ以上に少なからぬ方々が、ワード検索でこちらにお越しになられていることに最近気づきました。
やはりそのまま放っておくわけにはいかないかな、と。

私は確かにCIDPの完治(寛解)者ですが、私ごときが書けるのは、ごくごく小さな個人的な体験でしかないです。ふだんは、もうあの辛さも、治ったときの感激や感謝も忘れてしまっていることが多いです。

それでも・・・ もう15年以上経つのに、実のところ、あのときのことを思い出すとものすごく辛いのです。手足の耐え難い重さや、とにかく痺れて痛くて、動きがもつれる感じが、ありありとよみがえります。世の中の目を気にして、ひっそりと息をひそめて、身を隠していた感じとか。

だから、いま、リアルタイムであの状態を味わっている方々の気持ちを想像すると、私はとてもいたたまれない。でも、もしかしたら、いま困っているどなたかに、「うわぁ。ちゃんと治って元気にしている人がいるんだ!」って思っていただけたなら、ちょっとはいいことあるんじゃないかな、とも思うのです。

というわけで、がんばってまた書いてみます。はい。

重めがお嫌いな方は、ここでストップしてくださいね。
どうぞよろしくおねがいします。











確か、6月末に入院して、1ヶ月くらいそのまま病院に居ました。
神経内科の病棟に入院している人は、中高年の糖尿病合併症が多かったような記憶があります。当時はまだギャルギャルだった私は、その中ではかなり浮いていたのですが、30代の(MS=多発性硬化症だったかな。いや、たぶんもっと病名不明で、深刻な状況だったような覚えがあります)の女性と仲良くなったので、彼女の病室を訪ねてはよく話をしていました。

昼間はステロイドが効いてふつうどおりに動けた私は、ご飯を運んだり、目が見えなくなりつつあった彼女のために、本の読み聞かせをしたり(あ、私は朗読とか結構好きなのです)していました。彼女は物腰がやわらかくて、ふんわりとした雰囲気のとても優しい人で、いつも家族のことを心配していた。確か家族で会社を立ち上げたばかりだと話していたから、きっと、身を粉にして働きすぎたのでしょうね。なぜ、こんな人がこんなむごい病気にならなければならないのか、と思いました。

私の病状はたぶん、そのまま死に至るようなことはないと、自分で思っていた。
でも、彼女の状態は相当に厳しい、ようだった。

そのうち私は退院した。彼女はそのまま入院していた。
彼女に借りた本の朗読を、BGMと合成して録音した自作のカセットテープを持って、外来で通院するときに彼女の病室に会いに行った。1回だけ。

実のところ、私は退院して、ステロイドの量が減ったら、みるみるうちに状態が悪化していったのです。それはもうみごとなくらいに。入院していたときは元気だったのに、退院したらもう日常生活を送るのが精いっぱいの状態に陥りました。とても、朗読はもうできなかった。毎日なんとか自分の身体を維持していくだけでいっぱいいっぱい。

彼女から手紙をもらいました。繊細な花柄がプリントされた白い便箋に、細くて震える字で、優しい言葉が綴られていた。嬉しかった、けど、どうしても返事が書けなかったのです。会いにいくこともできなかった。そして、そのままになってしまった。まったく心の余裕がないくらいに、自分も辛かったのだとしか、言いようがないのです。しかたがなかったのだけれど、やっぱり後悔しています。

どうしようもなく、薬物(ステロイド)に左右されている自分の身体が恨めしかった。
他にはどうしようもない、のですよね?
他には治療法は無いの? 問いに答えはない。

ふつうはみんな、身体が思い通りに動くことは、あまりに当たり前で、改めて考えてみることなんて無いのかもしれないけれど・・・
どうしようもなく身体はモノだ。まったく思い通りに動かない身体の重さに、ひしひしとそんなことを感じさせられました。(ときどき不思議がられるのですが、片麻痺など、脳血管関連の後遺症などの方々のリアリティを私がある程度ながら理解できるのは、実はこういう背景があるのです)

この頃、確か9月。友人がごっそりと離れていきました。
ここからが、本当の勝負、だったと思います。

続きはまた。
by tamayura_tamayura | 2009-01-20 22:42 | CIDPの話
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